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執筆者の写真Yuki Yamamoto

「ぼくたちが穏やかな音楽を選ぶ理由~トーク&試聴会」

『クワイエット・コーナー~心を静める音楽集』(シンコーミュージック)刊行記念

吉本宏(音楽文筆家/bar buenos aires)×寺田俊彦(雨と休日)×山本勇樹

開催日:2015年1月11日

場所:B&B(下北沢)


山本勇樹 (監修者)を司会進行に、吉本宏氏(音楽文筆家)、寺田俊彦氏(CDショップ『雨と休日』店主)を交えた『クワイエット・コーナー~心を静める音楽集』発刊記念イヴェントが下北沢B&Bにて行われた。当日は3人のトークの合間に静かに目を閉じて静かな曲を聴くという、すごく贅沢な時間が流れた。


山本勇樹:元々フリーペーパーでスタートした「クワイエット・コーナー」ですが、おかげさまで一冊の書籍になって大変うれしく思います。この発刊記念イヴェントでは、本で紹介した作品から曲を選んで、僕たちのトークを交えていきます。アットホームな感じで進めたいと思います。では名刺代わりに1曲かけましょう


◎.イノセンス・ミッション 「Stay Awake」(『Now the Day Is Over』)


山本:いきなり子守唄をかけてしまいました。


寺田俊彦:なぜこれを選んだんですか?


山本:まずクワイエット・コーナーを説明するにはぴったりの曲で、この『Now the Day Is Over』というのが僕にとって特別なアルバムで、この本を「心を静める音楽集」と名付けたんですけど、まさしく聴くたびに心が鎮まるので、最初に選んでみました。


吉本宏:ほんとうに子守唄ですね。「メリー・ポピンズ」の映画でも使われていた曲のカヴァーですよね。


山本:ジャケットも小さな子どもがぬいぐるみを抱いて寝ている絵柄で可愛い。


吉本:こういう愛らしい女性ヴォーカルってまさに山本くんのイメージですよね。


山本:本の中でも「For a Quiet Girl」というテーマの所で彼らを主人公にしています。寺田さんも『雨と休日』でも、この作品を取り扱っていますよね。


寺田:イノセンス・ミッションは何タイトルか取り扱っているアーティストです。昔はギター・ポップ的な感じでしたけど、ここ5〜6作は本当に静かな作品を作ってます。


山本:今日は「ぼくたちが穏やかな音楽を選ぶ理由」というのをタイトルにしたトークショーですけど、この本を作るときの選盤をしていて、改めて自分が音楽を聴くのが寝る前や夜の深い時間という1人の時間が多いな…と思ったんです。このイノセンス・ミッションのアルバムも夜の静寂が似合うんです。吉本さんは普段どんな風に音楽を聴いていますか?


吉本: 僕は“繊細さ”や “余韻”という言葉や、日本人ならではの細やかな感性が大好きなんです。昔から寝るときにはいつも小さな音で音楽をかけているし、家へ帰ったときも明かりをつけるように音楽をかけています。そういう生活をずっと続けてきたので、自ずと穏やかで静かな音楽を聴くようになっていったんでしょうね。


山本:寺田さんのお店『雨と休日』もCDショップですけど、とても穏やかで心地いい空間ですよね。一歩足を踏み入れると別世界というイメージがあるんですが。


寺田:『雨と休日』は3坪くらいの狭いお店なんですけど、元々CDショップを作りたくて、CDが売れない時代にどうやったらCDを売れるか…というところからスタートしたお店なんです。そこに行けば自分が欲しい音楽がある、ワクワクドキドキする気持ちが湧いてくる…そういう空間を作りたいということで、今の形ができたんです。


吉本:『雨と休日』がオープンして初めて行ったときにまず驚いたのが、普通CDは背中を前にして並べてあるのに、1枚ずつ面出しをしてあったんです。それが、その後いつ行っても同じ数だけ並べられているんですね。そこまで選びとるのってなかなかできないですよね。まずそこに驚きました。それと、クラシック音楽の紹介の仕方がとても素敵で、これまでに何枚も買わせていただきました。


寺田:ありがとうございます。うちのお店は品数を絞って、質を高めて紹介するというコンセプトなんですけど、山本さんも、こういった音楽を一册の本にまとめるときの線引きは難しかったですか。


山本:ジャンルレスなディスク・ガイドだから、世界観を表現するのが難しかったですね。だから作品を紹介するページには抽象的な言葉だったり、時間帯とか雰囲気を表すテーマを付けました。想像を膨らませてもらえるように。


吉本:『雨と休日』では、「爽やかな朝に」や「夕暮れの音楽」など自分たちが暮らす生活の中のシチュエイションで曲が紹介されていて、とてもいい形で表現されているなと思いました。


寺田:元々吉本さんが参加されていた橋本徹さんのサバービアの影響がやっぱり非常に大きくて、ジャンルや国じゃない分け方にして、シチュエイションや気分をベースにしてセレクトするというのが自然なんじゃないかなと思いました。


山本:では2曲目をかけましょうか。これもジャンルで区切ることができない曲だと思います。『バー・ブエノスアイレス~カルロス・アギーレに捧ぐ』からセバスチャン・マッキ/クラウディオ・ボルサーニ/フェルナンド・シルヴァの「Fui Al Rio」です。


◎セバスチャン・マッキ/クラウディオ・ボルサーニ/フェルナンド・シルヴァ「Fui Al Rio」(『バー・ブエノスアイレス~カルロス・アギーレに捧ぐ』)


山本:まず南米音楽かなぁ…という印象はありますけど、ちょっと違う。でもジャズでもフォークでもないし…。これを初めて聴いたときは鳥肌を超えたものがありました。


吉本:初めてバー・ブエノスアイレスのコンピレイションを作ったときに彼ら(セバスチャン・マッキ/クラウディオ・ボルサーニ/フェルナンド・シルヴァ)にインタビューをしたんですけど、このアルバムは松尾芭蕉のことが好きだというアルゼンチンの詩人フアン・L・オルテスの詩集に曲をつけた作品なんですね。なるほどなと。その繊細な感覚に、地球の反対側にいるのにものの感じ方がとても似ているなと思いました。


山本:「クワイエット・コーナー」のディスク・ガイドでも12の章のテーマをつけていて、この曲が入った作品は「Viento,Luz,Agua」というスペイン語で風、光、水…という章に掲載されています。


吉本:人間はもともと風、光、水…を感じて暮らしていたので、きっとそれに心が動かされるものがあって、だからこそきれいな夕焼けや、青空やそういう風景とシンクロする音楽が生まれたのでしょう。


山本:まさしく『雨と休日』というのも感覚的でもあり、映像的なネーミングだと思いました。


吉本:イマジネイションが広がりますよね。


寺田:自分が扱おうと思っているCDをいつ聴いて欲しいか…と思ったときに「雨」と「休みの日」というのがキーワードで出てきたんです。


山本:ではここから吉本さんの選曲をおかけまします。


吉本:これまでにバー・ブエノスアイレスのコンピレイション・アルバムを4枚作った中で、最新作のビル・エヴァンスに捧げたアルバムの中からトリノ・ギター・クァルテットの「Peace Piece」を聴いてください。


◎トリノ・ギター・クァルテット「Peace Piece」(『bar buenos aires soiree – dedicated to Bill Evans』)


吉本:ギター4本で演奏しているイタリアのクァルテットなのですが、まるでピアノの音のように聴こえませんか?


山本:ビル・エヴァンスはジャズ・ピアニストなんですけど、それをギターでオリジナルに忠実に演奏してカヴァーしてます。


吉本:この「Peace Piece」という曲は、エヴァンスが「Some Other Time」というスタンダードの曲を弾いていたらどんどんインスピレイションが湧いてきて自然に曲が生まれたというエピソードがあるんです。


山本:ギター4本で演奏しているのに、とても静かな印象があって、余白というか音の隙間があって、聴いてても全然邪魔にならなくて心地いいですね。


吉本:何度聴いても味わい深い楽曲ですね。これこそ何度も聴いてその本当のよさがわかる曲ですね。ちょって地味なんですが、でも実は地味というのは本当のよさというのはなかなか気づきにくいということだと思うんです。


大手CDショップの店頭には並びにくい音楽をHMVという大手のレコード・ショップの店頭で展開したのが渋谷店に最後にあった「素晴らしきメランコリーの世界」のコーナー。上司からは「よくわからない」と言われながらも、コーナーを立ち上げたのが山本氏とマネージャーの河野洋志氏だった。自分の家のライブラリーをそのまま作ったような選盤、共感性、何かを感じ取って欲しいというコーナーで、北欧製の椅子にしばし腰を下ろして聴いて欲しいという作りになっていた。

そこでの選盤が「素晴らしきメランコリーの世界」のフリーペーパーになり、やがて「クワイエット・コーナー」になっていく。



山本:橋本さんが1999年に渋谷にオープンした「カフェ・アプレミディ」、後に階下にレストラン「グラン・クリュ」ができ、その店のイメージで選曲された音楽がすごくパーソナルな、落ち着いたテイストだったんです。実は「クワイエット・コーナー」もグラン・クリュのセレクションからかなり影響を受けています。そのグラン・クリュの世界観を表すような曲をかけたいんですけど、これは吉本さんにお願いします。


吉本:オランダにルイス・ヴァン・ダイクというピアニストがいまして、優しいワルツをたくさん弾いています。この大好きなアルバムの中から「Cartes Postales (from "Jamais Plus Toujours")」(『Nightwings 』)を聴いてください。ここで休憩に入ります。


◎ルイス・ヴァン・ダイク 「Cartes Postales (from "Jamais Plus Toujours")」(『Nightwings 』)



休憩明けは寺田氏の作られた『窓に伝う雨は』というコンピレイションCDの話題に。そして「クワイエット・コーナー」の表紙、裏表紙のこっそりとしたディテイルへのこだわりネタが披露された。


山本:後半は寺田さんの選曲から始めたいと思います。


寺田:では表紙に載っているヴァージニア・アストレイを聴いていただきたいんですが…。先にお話をしておくと、ヴァージニア・アストレイはこのアルバムの後に坂本龍一さんとコラボレイションしたアルバムを出して、それで有名な方なんですけど、『From Gardens Where We Feel Secure』というのは押し花のジャケットがすごく綺麗なファースト・アルバムで、イギリスの庭園の音と彼女のピアノが重なるという作品です。その1曲目の「With My Eyes Wide Open In Dreaming」を聴いてください


◎ヴァージニア・アストレイ「With My Eyes Wide Open In Dreaming」(『From Gardens Where We Feel Secure』)


山本:素晴らしいアルバムですね。


寺田:本の表紙に載せたのはなぜですか?


山本:もちろん僕にとって“人生の1枚”で特別な存在なんですけど、この本の表紙には普段のライフスタイルに溶けこむように、部屋の写真を載せたんです。でも、熱心な音楽ファンと、ある種の音楽的な価値観も共有したかったので、部屋の中に、このヴァージニア・アストレイとラドカ・トネフのLPを置きました。


寺田:僕も好きで昔から聴いているアルバムでして、1983年の作品なんですけど、いわゆるニュー・エイジとかヒーリングとは一線を画している作品で。


吉本:聴いていると静かに情景が浮かびあがりますね。


寺田:演奏は野外で録音しているのではないですけど、本当に開放感のあるサウンドになっています。アルバム・コンセプトが初夏の英国式庭園の風景を描いた作品ということもあって、レコードのB面になるとちょっと暑くて怠い感じがするところも良い。


山本:途中、牛や動物が啼いたりして、田園風景が。


寺田:そういう情景が浮かんできて、包まれるという言葉がぴったりですね。


山本:このヴァージニア・アストレイのアルバムが好きな人とは絶対仲良くなれそうな(笑)、それくらいの信頼感のある存在ですね。寺田さんがこのアルバムを好きだというのがよくわかります。S.E.(サウンド・エフェクト)がイマジネイションを膨らませてくれます、映像的でサウンドトラック的で。


寺田:そうですね、自然の音と音楽を重ねるというのは最近ではよくありますけど、これは安易な感じでもないし。


吉本:バルモレイというアメリカのテキサスのバンドの「San Solomon」という曲にも、冒頭から子どもたちが楽しそうに遊ぶ声が聴こえてきてとてもいいんですよ。


山本:では、その曲を聴いてみましょうか。


◎バルモレイ「San Solomon」(『Rivers Arms』)


吉本:いまここで偶然にヴァージニア・アストレイからバルモレイにつながっていくというこの感覚が、寺田さんがCDをコンパイルしたり、山本くんがクワイエット・コーナーで紹介したりというジャンルを超えた“つながり”の部分ですね。


山本:年代もジャンルも国も違って、もちろんお互いの接点もないのに、この2つの作品が並ぶことで、見えてくる風景や共通な情景が浮かんでくるんです。だから、具体的なつながりがわからないとしても、自分なりに自由にイメージしていただきたい。このディスク・ガイドも僕は作り終えた時点で、みなさんのディスク・ガイドだと思っていますから、自由に想像していただいて聴いていただければすごくうれしいです。じゃぁ寺田さんにもう1曲。


寺田:『雨と休日』というお店を始めたときに、ニュー・エイジとか昔のフォーク・ミュージックとかジャズとかそういう静かな音楽を集める中で、クラシックという柱を一つ作りたいと思ったんです。何から聴いたらいいのかなと思ってる人の助けになれたらいいなとも思って。では、元々マニア志向ではない僕のクラシック趣味を反映しつつ、クラシック界ではマイナーだけど、こんなきれいな曲があるよ…というのを紹介させていただきます。ディーリアスはイギリスのクラシック界ではものすごく有名ですけど、一般にはそれほど知られていないという作曲家です。キングズ・カレッジ合唱団 の「夏の夜、水の上にて歌える-第1曲 第2曲」。


◎キングズ・カレッジ合唱団「夏の夜、水の上にて歌える-第1曲 第2曲」


寺田:イギリスの作曲家の作品には、底が深くて見えないようなところがあるんです。クラシックではこういう情景描写的な作品が好きなんですが、これは旋律も綺麗なので初心者の方でも聴きやすいと思いますし、ベート―ヴェン、モーツァルトと言った有名な作曲家ではなくともクラシック入門はできるんだと、世に問いたい気持ちもあって。


吉本:映画を観ているようでしたね、いい曲というのはイマジネイションをかきたてられて情景が浮かんできます。


山本:映像が浮かぶというのはひとつのキーワードで、よい音楽の基準のような気もします。


寺田:アーティストが、ドビュッシーとかサティとかそういった作曲家に影響を受けている…と知っていても、それを同じ売り場で売るのは難しいように思うので、その手助けをしたいんです。クラシックというのは古い音楽だけど、そのアーティストのベースになっていると、入って行きやすいし、時空を超えて共通性を見つけることができるというのは、音楽を聴く楽しみの大きなものの一つだと思っています。


吉本:アントニオ・カルロス・ジョビンの曲を聴いているときと、モーリス・ラヴェルの曲を聴いているときと似たような気持ちになることがあります。これはジャンルとは関係なく、聴いたときに感じる感覚が近いということで、『雨と休日』にジョビンとラヴェルが並んでいても何の不思議もないですよね。


山本:次にかける曲もこの流れにぴったりかもしれません。今回の「クワイエット・コーナー」のディスク・ガイドは350枚くらいの音楽を紹介しているんです。その中で、このアルバムは最初に浮かんだ10枚のうちの1枚に入るような優先順位上位の作品です。キース・ジャレット「My Wild Irish Rose」です


◎キース・ジャレット「My Wild Irish Rose」(『The Melody at Night, with You』)


山本:これはジャズのスタンダードをソロ・ピアノでカヴァーした曲ですね。


寺田:キース・ジャレットというジャズのピアニストの作品の中でも異色の作品で、さらにジャズというジャンルで考えても特殊な作品です。


山本:彼の作品で恐らく一番有名なのは『ケルン・コンサート』で、即興演奏で作ったピアノ・ソロが代表作として知られているんですが、僕や寺田さん、吉本さんとかはキース・ジャレットといえば、まずこの『The Melody at Night, with You』を思い浮かべてしまうんです。


寺田:僕も『ケルン・コンサート』をまず聴いて、普通のピアノ・トリオの作品を聴いて、最終的にこの作品にたどり着きました。


山本:どうしてこんな優しくて綺麗なアルバムなのかというと…素敵なエピソードがありまして。キース・ジャレットが何枚もアルバムを出して、ワールド・ツアーを行い、身体が疲れきってしまって病気になってしまい、一切の演奏ができなくなって自分から音楽を生み出せなくなってしまう時期があったんです。そこで、一番看病をしてくれたのが奥さんで、その助力があってキース・ジャレットはポツリポツリとでもピアノを弾き始めるんです。その時に録音されたのがこのアルバム。その奥さんに愛情を込めて捧げた作品です。


寺田:スタジオではなく自宅で録音したもので、元々リリースすることも考えてなく、本当に奥さんのためだけに作った作品らしんですけども、そういうエピソードを合せて聴くと、さらに味わい深く、作品に対する愛情がもっと膨らんでいくんですね。ジャズは聴かないけど、これは好きだっていう人もいます。


吉本:寺田さんが先ほどかけたクラシックの曲に続いて、いまこの作品がかけられたことが、僕の中では自然なこととしてつながっていて、どちらの曲もそれこそ午睡から目覚めたときに、どこか遠くからピアノが聴こえてくる感じなんです。このつながりこそがまさにクワイエット・コーナーで表現されている感覚なんです。


山本:初めて聴くけど、どこか懐かしいというか、どこかで聞いたことがあるんじゃないかな…というくらい親しい音楽なんですね。


吉本:音楽は言語じゃないので、感じて記憶にとどめたい。もちろんいろいろなエピソードがあればより理解は深まるけども、やはり初めてその音楽に接する時には真っ白な気持ちで聴きたいですね。その時に自分の心がどう動くかとか、何を思い出すかとか、それが自分たちが音楽を聴くことの原点なんです。この『The Melody at Night, with You』には何の説明はなくともキース・ジャレットの優しさがにじみ出ていますよね。


山本:よく吉本さんと連想ゲームみたいなことをするんですけど、1枚の作品を聴いて何か感覚でつながるものをもう1枚見つけたりするのが楽しくて、そこからどんどん広がっていって。


吉本:普通DJが選曲するとき1人がずっと曲をかけますよね、でも僕らはそうじゃなくて、交互に1曲ずつかけるんです。山本くんがかけた曲を聴いた瞬間に、次の曲が浮かぶ、そこが楽しみでもあり、無意識にそういった曲を選んでいる自分に驚くこともあるし、この曲とこの曲がつながったんだという純粋な喜びがあるんです。


山本:寺田さんのお店をみても、知ってる作品の左右上下に並んでるもの、どういうつながりがあるんだろうとか、自分の好きなものかな?とかそういうつながりを想像してみる。


寺田:お客さんで試聴もしないで直感で買っていかれる方が時々いらっしゃるんです。もちろんCDにはコメントも付いているんですけど、それもたいして読まずに買われて。そういう方の選び方っていうのが、自然でいいなと思うときがあります。


山本:では、長らくトークショーにお付き合いをさせていただいたのですが、最後の曲を紹介したいと思います。ヴァシュティ・バニヤンというイギリスのシンガー・ソングライターの最新作を。ちなみにディスク・ガイドと一緒に発売されたコンピレイションにも収録されています。


寺田:彼女の場合、最新作といってもファースト・アルバムが1970年で、2作目が2005年で、次が2014年という。


山本:本当に時を超えて作品を出していて、2014年の音楽なんですけど、ぱっと聴くと、2014年だか1970年だかわからない。そこがすごいところですね。では最後の曲を聴く前にそれぞれ今日の感想をお願いします。


寺田:これだけ静かな選曲なのに、みなさんじっと聴いてくださって、楽しませていただきました。


吉本:こうやって何十人もの人が静かに目を閉じて静かな曲を一緒に聴いているというのは、すごく贅沢なことだなと思います。少し気恥ずかしかったりするかもしれないけども、これはやはりすごく贅沢な時間だなと思っていて、そこで何かを感じとって帰ってもらえたらいいなと思います。


寺田:散々喋った後に言うのもなんなんですけど、今日流した音楽の流れというか、“つながり”というのが一番の本質なんじゃないかな。


山本:そうですね。この「クワイエット・コーナー」のディスク・ガイドもそうなんですけど、淡々といろんな音楽がジャンルレスに並んでいて、そのつながりを見つけてもらえたら嬉しいですね。もちろんぼんやりとただ眺めて楽しんでいただいてもいいですし。でもこうやって音楽を聴いてもらって、喋る場所は必要だとも感じていて。始まる前はお客様が来ていただけるのか不安だったんですけど、予想以上に来ていただいて感謝しています。音楽好き3人が部屋で集まって音楽を聴きながらお喋りしているのをお見せしているようなプライヴェートな感じだったと思うので、みなさんお楽しみいただけたか不安なんですけど・・・。でもぼくら自身楽しかったので、よかったかなと思っています。では最後にヴァシュティ・バニヤンの「Heartleap」。本日はありがとうございました。


◎ヴァシュティ・バニヤン「Heartleap」(“Quiet Corner – a collection of sensitive music”)

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